近年注目を浴びているクラフトジン。海外産のものはもちろん、日本でもオリジナリティーあふれるジャパニーズクラフトジンが続々と登場しています。
ジンの定義は「農作物由来のアルコール(最終アルコール度数37.5%以上)を使用し、ジュニパーベリーの香味を持たせる」と、いたってシンプル。原料の選択肢が幅広いため、その土地ならではの青果や植物(ボタニカル)を使うことで個性を出しすく、その土地で育った自然の恵みをダイレクトに伝えられるのが大きな魅力です。
そんな個性豊かなクラフトジンは、それぞれどんな特長があり、どんな人たちの手によって作られているのでしょうか。日本各地の蒸留所を訪ね、作り手たちのジンにかける思いをうかがいました。今回は、北海道・積丹(しゃこたん)町にある蒸留所「積丹スピリット」です。
「積丹ブルー」で知られる人口約1900人の町
積丹町は、北海道西海岸・積丹半島の先端に位置する町。中心地の札幌市から車で約2時間半走らせると、雄大な日本海に切り立った海岸が連なる、圧巻の景色が出迎えてくれます。青く透き通った美しい海は「積丹ブルー」と呼ばれ、観光客に人気。また、ウニ漁が解禁される6月~8月には、その味を求めて道内外から多くの人が押し寄せます。

積丹岬から見下ろす積丹ブルー。
一方で、30年前には約4000人いた積丹町の人口は、現在約1900人。人口の流出は今もなお続いており、寒さ厳しい冬の季節ともなると、町全体がひっそりとした空気に包まれています。
そんな町に小さな火を灯したのが、2018年3月創業の積丹スピリットが手掛けるクラフトジンです。2020年6月に同社から発売された「火の帆 HONOHO」は、積丹で育ったボタニカルをふんだんに使った、まさに積丹ならではのジン。第一弾商品の「KIBOU」では21種類のボタニカルを使用し、独特の清涼感と芳醇な香りが見事に表現されています。

積丹スピリットの「火の帆 KIBOU」。積丹ブルーをイメージした、青を基調としたラベルが目印。
特徴的なのは、蒸留だけでなく、ジンの原料となるボタニカルを自社所有の農地で栽培していること。積丹スピリット代表の岩井宏文さんは「世界的に見ても、原料を自分たちの手で一から育てているジンメーカーは珍しい」と話します。

積丹スピリット代表・岩井宏文さん。
同社所有の敷地は総面積5.7ヘクタールで、そのうち2ヘクタールを圃場化し、樹木類を含め約80種類のボタニカルを栽培。現時点で商品の原料に使われているものは一部で、10年後、20年後に原料となるようなボタニカルも育てているといいます。


広々とした農園の敷地内に立つ、積丹グリーン研究室の建物。
「『KIBOU』のキーボタニカルとして使われているのは、“北海道の木”に指定されているアカエゾマツの新芽。成長すると松の香りが強く感じられますが、新芽は爽やかな柑橘系の甘い香りを放つことがわかったんです。我々としてはぜひこの香りを使ったジンを作りたいと思ったので、新芽だけを原料に使うことにしました」
そう話すのは、積丹スピリットで農作業の統括から蒸留の責任者も務める、プラントマネージャーの岩崎秀威さん。積丹では毎年6月、わずか2週間だけのアカエゾマツの新芽のシーズンに、集中して収穫を実施。重量はおよそ100kg、松の木200本分に相当する量で、この期間は道内からたくさんの人が収穫の手伝いに来てくれるそうです。

プラントマネージャーの岩崎秀威さん。以前は土壌技術研究者としてイチゴ栽培に従事していましたが、旧知の中だった岩井さんのプロジェクトに賛同し、2018年から参画。
「KIBOU」にはアカエゾマツの他、キタコブシ、エゾヤマモモ、エゾミカンなど北海道ならではのボタニカルを使用しています。収穫したボタニカルは、スタッフが「ラボ」と呼ぶ積丹グリーン研究室に集約。植物のどの部分を使うか、どんな大きさにカットすれば香りが出るか、日々研究を重ねているといいます。

積丹グリーン研究室では、積丹町を中心とする北海道の多種多様なボタニカルを選定。

「KIBOU」の原料のひとつ、キタコブシ。手作業で一つ一つカットして加工しています。
「我々がもっとも大切にしているのが、この原料化という工程。植物を育てて収穫するまでは、農業の知識があれば誰でもできること。それをどうやってお酒にするかが一番のポイントになります」(岩崎さん)
様々な方法で原料化したボタニカルは、同社敷地内の蒸留所へ。サトウキビを使ったニュートラルスピリッツを使い、1種類ずつ蒸留していきます。熱を加えず、空気圧を下げて蒸留する減圧蒸留器を使うことで、植物のエッセンシャルオイルの成分を壊さずに抽出。植物そのものを嗅いでいるような豊かな香りを持った、シングル・スピリッツが完成します。

積丹スピリット蒸留所。モダンでスタイリッシュな外観が特徴です。


それぞれのスピリッツを絶妙な割合でブレンドし、オリジナルのクラフトジンを創り上げていく。音楽好きの岩崎さんはこの工程を楽曲制作のミキシングに例え、「蒸留酒のブレンドは、音源を作るようなイメージで調整しています。足し算よりも引き算の方が大切な工程ですね」と語ります。
ブレンドの技術が光る絶妙な香り
こうして完成した「火の帆 KIBOU」。火山の造山活動によって形成された積丹半島では夏になると「天狗の火渡り」という伝統行事が行われることなどから、この名がつけられました。

ボトルを開けると、森林の中にいるような青々とした香りが広がります。ひと口いただいて最初に感じるのは、柑橘を思わせるようなアカエゾマツの新芽の爽やかなフレーバー。続けて、キタコブシやオオバクロモジのウッディーな香り、エゾミカン・エゾヤマモモの清涼感、ホップの香りが心地よく鼻孔を通り抜け、余韻には、タイムやセージなど7種類のハーブをミックスしたオリジナルハーブの豊潤な香りが残りました。
さまざまな香りが複雑に合わさりながらも全体的にスッキリとした清涼感があり、一つ一つの風味がぼやけていないのが印象的。1種類ずつ蒸留することでそれぞれのボタニカルの魅力が際立っており、ブレンドの妙を感じます。
「良いジンができるかどうか、最終的に一つの味ができるか、そのバランスを調整するのが最後まで大変でしたね。ブレンド会議を何度も重ねました。最終的に、エゾヤマモモを増やすことによって全体が活きるようになりました。他にもおいしいブレンドはありましたが、おいしいよりもクセのある方がおもしろいと思って、現在のブレンドに。非常に絶妙なバランスで完成したと思っています」(岩井さん)
ロックやストレートならジンの香りをダイレクトに楽しむことができ、ソーダ割りや水割りなら食中酒としてもおすすめ。爽やかな香味で、和・洋・中はもちろんエスニックなど個性の強い料理ともよく合いそうです。
「積丹は豊かな町だと知ってもらえるきっかけに」
岩井さんに改めてお話をうかがうと、“積丹のクラフトジンをつくる”というプロジェクトが始まったのは2015年のこと。農林水産業のコンサルタントをしていた岩井さんは、学生時代に積丹町で地域活性の研究に勤しんでいた縁もあり、町内に90ヘクタールある遊休農地の活用法を調査。豊かな自然の魅力を発信する媒体として、クラフトジンに可能性を感じたといいます。

「この町で何が資源かと考えたときに思い浮かんだのは、やはり海、山、そして植物。海はこれまでも開発されてきたので、山や植物を使ったアイデアを募っていました。その中で、スコットランドの『ブラックウッズ』というジンを紹介されたんです。非常に風が強く、荒涼とした大地で造られたジンだと聞いて、ぜひ詳しく知りたいと思いました」(岩井さん)
スコットランドの蒸留所を訪ね、道内で栽培・自生する100種類ものボタニカルの中からジンの原料となりそうなものを選び抜き、未経験から酒類製造免許を取得……。岩崎さんをはじめとする賛同者の参画・協力もあり、ゼロから始まったプロジェクトは少しずつ成長、クラフトジンという形になって世の中へ発信されました。資金調達のために実施したクラウンドファンディングで約330人から支援を受けるなど、全国のジン好きから注目を浴びています。

「KIBOU」に続き、花をテーマにした「BOUQUET(ブーケ)」、原料にシラカバやリンゴを使用した「TOMATOH NAGOMINOMORI GIN(苫東・和みの森ジン)」など、コンセプチュアルな商品も続々登場。ボタニカル1種類ずつの蒸留だからこそ、ブレンド次第でさまざまな香り・味わいが楽しめるのも積丹ジンの大きな特長です。
「今後は、1種類ずつ蒸留したお酒を自由に組み合わせて楽しめるような “ライブラリーバー”や、ワークショップをやりたいです。そういう地元の人や観光客の方が気軽に立ち寄れるような場所があれば、積丹の魅力を発信でき、『この地域はこんなに豊かな町なんだ』と知ってもらえるきっかけになる。外に出られずじっとしているような寒い季節にこそ、お酒とじっくり向き合えるような場を提供したいですね」(岩井さん)

抽出した1種類ずつのボタニカルスピリッツ。実験をするように組み合わせてみるのも楽しい。
積丹のボタニカルの魅力を、蒸留やブレンドの技術を通して伝えていく。可能性が無限に広がる積丹スピリットの挑戦は始まったばかりです。
【全国のバーテンダーの皆さんへメッセージ】
「『火の帆 KIBOU』は、我々が自然を感じるのともっとも近い香り、森の中や農場にいるときに感じられる香りが出ているお酒です。北海道や積丹を感じてもらえるお酒だと思うので、バーではぜひ素材感を感じるような飲み方を提案していただきたいですね。歴史的な石蔵を改装した『海森スタジオ』というゲストバー付きの施設がありますので、積丹ジンを好きになってもらったら、ぜひ足を運んでいただければと思います」(岩井さん)
<&BAR × JT 「BARサポ」キャンペーン>
本記事で紹介した『火の帆 KIBOU』とその他国内3つの蒸留所のクラフトジンをあわせて応募者に(先着制)無料でお届けいたします。
【キャンペーン実施主体】
&BAR運営事務局(Retty株式会社内)
【実施期間】
2022年4月1日(金)〜5月31日(火)
※新型コロナウイルス感染症などの影響により、クラフトジンの配布時期・キャンペーン開始時期などの実施期間が変更になる場合がございます。予めご了承ください。
【参加対象】
東京都に店舗がある飲食店(バー業態)
■当キャンペーン及び参加方法に関する詳細はこちらをご覧ください。
BARサポキャンペーンWEBサイト
https://campaign.andbar.net/barsapo/index.html

