老舗の焼酎蔵がクラフトジンづくりに挑戦 鹿児島・桜島の自然に育まれた「KOMASA GIN」

会員様向け 2022.01.26

最終記事更新:2022.03.26

近年、海外だけでなく日本各地でも造られるようになってきたクラフトジン。その土地で育ったボタニカルを原料として使用することで、その土地ならではの特色を表現でき、個性を出しやすいのが特長です。

ブームを受け、大手メーカーや酒造会社がクラフトジンに参入する事例も増えています。今回訪ねた鹿児島県の「小正(こまさ)醸造」も、そのひとつ。明治時代から焼酎蔵として栄え、数年前からは鹿児島ならではのボタニカルを活かした「KOMASA GIN(コマサジン)」を製造、国内のみならず、海外ユーザーからも熱い支持を受けています。

しかしながら、そこに行きつくまでの道のりは決して平たんなものではありませんでした。挫折感を味わい、発想の転換から生まれた小正醸造のクラフトジン。果たしてどんなお酒なのでしょうか。

 

ウイスキーづくりにも挑戦、創業130年を越える老舗焼酎蔵


明治16年に創業した小正醸造は、焼酎を主とする酒造メーカー。薩摩半島の中西部に位置する日置市に本社を置き、芋焼酎「さつま小鶴」「蔵の師魂」や「赤猿」「黄猿」など、製造している商品は県外にも広く流通しています。

 2017年にはウイスキー製造免許を取得し、「嘉之助(かのすけ)蒸溜所」の名称でウイスキーづくりも開始。2021年8月にはウイスキー製造事業が独立・分社化し、現在は小正醸造の4代目社長だった小正芳嗣(よしつぐ)さんが代表取締役を務めています。

日置市にある小正醸造。創業130年を越える老舗メーカーです。

 

同市内にある、ウイスキー製造所の嘉之助蒸溜所。モダンな建物の先には雄大な東シナ海が広がります。


小正さんがウイスキーやジンづくりを始めたのは、4代にわたって作り続けてきた自分たちの“焼酎”が、海外で認められなかったという苦い経験が契機になっています。小正さんが大学を卒業し、故郷・鹿児島に戻り焼酎づくりに携わっていたころ、日本は折しも焼酎ブームに。これは海外にも展開していくチャンスだと輸出を始めましたが、思うように売上が伸びずに苦戦を強いられていました。

前・小正醸造社長、現在は嘉之助蒸溜所の代表を務める小正芳嗣さん。小正醸造在籍時にクラフトジン開発の指揮を執りました。


「欧米には『食事をしながら飲む蒸留酒』というものがありません。食中酒はビールやワインなどの醸造酒が一般的で、焼酎のように蒸留酒を水やソーダで割って食中酒として飲む文化がなかったんです。約30カ国に向けて輸出をしましたがなかなか広まらず、大変苦労しました」(小正さん)

それからしばらくして、さらに追い打ちをかけるような出来事が起こります。スコットランドのとある会社から、長期樽熟成の米焼酎「メローコヅル」を扱ってみたいという連絡が入り、小正さんは「焼酎輸出の突破口になるのでは」と期待しながら商談を進めていました。ところが、最終的に「やはり“焼酎”というものがよくわからないから」という理由で、交渉は決裂してしまったといいます。

「本当に悔しい思いをしました。長期樽熟成の焼酎を日本で始めたのは、小正醸造です。しかし、世界の共通言語である蒸留酒を造らなければ、私たちがずっと造ってきた焼酎のバックグラウンドが伝わらないと思い知らされました。ここは思い切って、樽熟成という環境、技術、テイスティング、ブレンドというものをすべて含めて、“ウイスキーという世界の共通言語”にのせて表現しようと、考え方を切り替えることにしたんです」(小正さん)


悔しさをバネに、ウイスキーづくりへの挑戦を始めた小正さん。2017年にウイスキー製造免許を取得すると、洋酒事業をさらに拡大すべく、2018年にはスピリッツの製造免許を取得。ジンづくりへの第一歩を踏み出したのです。ウイスキーは原酒を一定期間以上熟成させる必要がありますが、ジンはジュニパーベリーとボタニカル、ベースとなるスピリッツさえあれば造ることができます。「ウイスキーを寝かせている間、小正醸造の自慢の焼酎を活かしたジンを造ろう!」というアイデアが、「KOMASA GIN」誕生のきっかけとなりました。

桜島で1カ月間だけ収穫できる「桜島小みかん」


小正醸造のクラフトジン第一号のメインボタニカルに選ばれたのは、鹿児島のシンボル・桜島で収穫される「桜島小みかん」(以下、「小みかん」)。一般的な温州みかんより二回りほど小さく、その大きさはピンポン玉ほどで“世界一小さいみかん”と言われるほど。

桜島小みかん。左がSサイズ、右が2Lサイズ。小さいものほど市場価格が上がるのだそう。


「せっかく鹿児島で蒸留所メーカーとしてスタートを切ろうとしているのだから、しっかり鹿児島の素材にフォーカスしたものにしようと思いました。当時のジンは“バーでしか飲めない、敷居の高いお酒”というイメージを持つ方が多かったので、もっとわかりやすく、女性でも手に取りやすいようなものを目指そうと。そこで思いついたのが、桜島小みかんだったんです」(小正さん)

小正さんは、日本の温州みかんが英語圏で「Satsuma(サツマ)」と呼ばれていることに着目。鹿児島は温州みかん発祥の地で、江戸時代末に長崎に来たドイツ人医師・シーボルトや、明治初期に米国の日本大使を務めていた夫婦などの手によって欧米に渡り、“サツママンダリン”として今なお定着しています。日本だけでなく、海外の人から見ても味や香りのイメージがつくというのは大きな武器になると考えました。

冬の間、わずか1カ月ほどしか収穫できない桜島小みかん。

 

桜島で小みかん農園を営む白川隆さん。「皮をむいて、ひと口でパクッといくのが小みかんの食べ方」と教えてくれました。


小みかんは鹿児島・桜島の特産物として、主に県外に向けて販売されています。収穫できるのは、12月~1月にかけてのわずか1カ月ほど。火山灰が降りかかると果実が傷物になり出荷できなくなるため、ビニールハウスの隙間から入り込む灰は手作業で払っているといいます。そうして丁寧に育てられた小みかんは、果肉は甘みが強くてジューシー、ジンに使う皮はほどよい厚みがあり、爽やかな香りが楽しめます。

 

ボタニカルは3種類のみ。シンプルな原料で勝負


小みかんは桜島の農園から搾汁(果汁を絞る)加工をする工場に運ばれ、実の部分は果汁として他の製品に利用、余った皮の部分を「KOMASA GIN」の原料に使用します。他に原料として使うのは、ジュニパーベリー、コリアンダーのみ。「3種類のボタニカルをまとめてネットに入れ、ベースとなる米焼酎で満たした小型の蒸留機へ。3,4時間ほどかけて蒸留を行います」と話すのは、生産本部の枇榔(びろう)誠さんです。

「KOMASA GIN 桜島小みかん」に使われる3種の原料。右手前から時計回りに桜島小みかんの皮、ジュニパーベリー、コリアンダー。

 

ジンづくりに開発当初から携わっている、日置蒸溜蔵生産本部次長の枇榔(びろう)誠さん。


「柑橘系の原料はドライピールなどが使われることが多いですが、『KOMASA GIN』は副産物をうまく活用させてもらい、生のみかんの皮を使用してよりフレッシュな香りを出しているのも特徴ですね。小みかんジンのベースに使用しているのは米焼酎。小みかんジンはお酒そのものの味わいが感じられやすいので、コクのある米焼酎でお酒の柔らかさを出しています」(枇榔さん)

もともとは試験蒸留用に使っていた小型の蒸留機(写真左)でジンを製造。容量は1000リットルで、小正醸造の通常商品の蒸留機(写真右)と比べて1/6の大きさです。


焼酎で挫折感を味わいながらも、ウイスキーとともに新たな戦力として誕生した「KOMASA GIN 桜島小みかん」。一体どんな味わいなのか、試飲させてもらいました。



キャップを開けると、思わず深く吸い込みたくなるような、小みかんの甘く爽やかな香りがふわりと香ります。飲んでみると、想像よりも小みかんの風味は控えめ。柑橘の香りが米焼酎のコクとマッチし、ジンにあまり慣れていない人でも飲みやすそうな味わいです。コリアンダーのほのかなスパイシーさで、印象的な後味に仕上がっています。



「ジュニパーベリーと小みかん、最初は二つのボタニカルだけで作ってみました。それだけでも香りはよく出ましたが、もう少しアクセントが欲しいなと。コリアンダーを加えたことで、よりボディがしっかりしたお酒になりました」(小正さん)

 

クラフトジンが海外輸出への扉を開いてくれた


桜島小みかんのほか、ほうじ茶を原料に使った「KOMASA GIN ほうじ茶」、日置市で生産したイチゴを使った「KOMASA GIN 苺」などをラインナップ。現在、日本国内よりも海外市場への流通が順調だといい、一番ボリュームが大きいのはアメリカ、次いで中国、台湾、シンガボールなどのアジア圏、フランス、イタリア、スペインなどのヨーロッパにも広がっているといいます。悔しい思いをした出来事を乗り越え、小正醸造のクラフトジンは大きく飛躍することとなりました。

「海外展開に関しては、10年以上焼酎でずっと苦労してきました。ジンのおかげで、今まで苦労していた海外輸出の扉が大きく開きましたね。ベースに使っているのは焼酎なのに、“ジン”というフィールドに入ることによって受け入れられるようになる。ちょっと視点を変えるだけで、物事は大きく変わるんだということを実感しました。今後も鹿児島のボタニカルを活かしたジンを造っていきたいと考えていますので、ぜひ楽しみにしていただきたいです」

焼酎と長年向き合い、一度は閉じかけた世界への扉をふたたび開いた小正醸造のクラフトジン。鹿児島の魅力がたっぷり詰まった「KOMASA GIN」の今後の展開にも期待が高まります。

 

【全国のバーテンダーの皆さんへメッセージ】

「ボタニカル自体にフォーカスを当てた商品なので、そのフレーバーを活かしてもらえるようなカクテルを作っていただきたいです。シンプルにソーダで割るだけでもいいですしし、香りづけとして使ってもらってもいいですね。僕らはまだまだジンメーカーとしてスタートしたばかりなので、カクテルに関してはバーテンダーの皆さんの大胆な発想で、良い活かし方を試してもらえればと思います」

 

<&BAR × JT 「BARサポ」キャンペーン>

本記事で紹介した『KOMASA GIN』とその他国内3つの蒸留所のクラフトジンをあわせて応募者(先着制)無料でお届けいたします。

【キャンペーン実施主体】
&BAR運営事務局(Retty株式会社内)

【実施期間】
2022年4月1日(金)〜5月31日(火)

※新型コロナウイルス感染症などの影響により、クラフトジンの配布時期・キャンペーン開始時期などの実施期間が変更になる場合がございます。予めご了承ください。

【参加対象】
東京都に店舗がある飲食店(バー業態)

■当キャンペーン及び参加方法に関する詳細はこちらをご覧ください。
BARサポキャンペーンWEBサイト~
https://campaign.andbar.net/barsapo/index.html

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