&BAR編集部がお送りする、連載企画「いまでや代表が語る“これからのBAR”」第4回目。
本連載では、千葉に本店を構える酒販店「IMADEYA」を運営し、アルコール業界、飲食店業界に精通する株式会社いまでや代表・小倉秀一さんにインタビューを実施。業界の現状や今後について、海外のアルコール事情、バーの店舗運営に関することまで、幅広いテーマでお話を伺いました。バーをはじめとするさまざまな飲食店・酒類メーカー・生産者と信頼関係を築いてきた、小倉社長ならではの視点で語られる“これからのBAR”の姿とは?
連載第4回目のテーマは「今後要注目のお酒」です。
ブランデー、どぶろく…まだまだある注目のお酒
――第2回の記事でクラフトジンやクラフトウイスキーについてのお話をうかがいましたが、他に注目しているお酒、メーカーや酒蔵さんなどがあれば教えてください。
私がおもしろいなと思っているのが、バーで樽熟成したウイスキー。以前カナダに行ったとき、いろいろなスコッチを店内の古樽で熟成させているバーに出会ったんです。これは何?と聞いてみると、「市販されているウイスキーを自分で樽に入れて熟成させているんだよ」という。シェリー樽やバーボン樽などをリメイクすることで、樽の持ち味による味わいの違いもでるというので、非常におもしろいなと思いました。同じことを、たとえば「百年の孤独」や「天使の誘惑」といった有名な焼酎を樽で熟成させたとしたら、また違う香りや味わいを表現できるはず。すでに、京都の有名な「BAR K6」などでは、ウイスキーやグラッパを店内の樽で熟成させて、オリジナルのメニューを提供しています。そういった試みが広がっていったらいいなと思いますね。

株式会社いまでや代表・小倉秀一さん。
他に可能性を感じているのが、ブランデーです。日本人ってあまりブランデーを飲まないイメージがありますが、たとえば今、千葉県にある蒸留所「MITOSAYA」さんではフルーツブランデーなどを造っていて、これが非常に評判です。購入しているのは、ブランデーに非常に詳しい、どちらかと言えばマニア層の方やバーテンダーの方。そういう方々が自ら情報を取りに行って、わざわざ並んでまで買いに行っている、それぐらい人気があります。商品の質がいいというのももちろんありますが、蒸留機が小さくてリリース数が少ないので、やはりプレミアム感があるというのも大きいと思います。もしかしたら、これからクラフトブランデーが来るのではないかと期待しています。
――醸造酒のジャンルではいかがでしょうか?
最近は、どぶろくがおもしろいと思います。どぶろくといえば安価なイメージがありますが、たとえば「民宿とおの」(岩手県・遠野)という民宿の中にある小さな醸造所で造ったどぶろくは、無農薬・自家栽培のお米を使い洗練されたお酒。500mボトルで2500円という、どぶろくとしては高めの価格設定にもかかわらず、ニーズが高まっています。今までの“どぶろく=安い、味が良くない”というイメージとは異なる存在ですね。今年6月、日本酒「紀土」で知られる平和酒造(和歌山県)さんが、日本橋兜町にどぶろくの醸造所を開業予定というニュースもあり、おいしいどぶろくを飲む機会がますます増えるのではないでしょうか。

民宿とおのの「どぶろく水もと・無添加」
コロナ禍で生まれたサステナブルな取り組み
――コロナ禍など、今の時代だからこそ注目しているお酒はありますか?
実は、ワインを蒸留してブランデーを作る、という取り組みをいまでやで始めています。コロナ禍における飲食店さんの休業・時短営業で、当社でも業務用の輸入ワインが出荷されずに在庫を抱える状況が続いていました。そうすると、どうしても品質が落ちてしまうものが一部ありまして、そのまま飲むには味や香りが損なわれてしまうという問題があったんです。そのワインをうまく活用できないかと思い、先ほどのMITOSAYAさんに相談したところ「やってみましょう」と言ってくださった。そうして、ワインを蒸溜してホワイトブランデーにしたり、樽で熟成させたりといった試みを始めています。SDGsの観点からも可能性を感じる取り組みだと思っています。

品質が落ちてしまったワインは、料理ワインとして売ろうかという話もありました。でも、MITOSAYAさんにご協力いただけることになったので、これはおもしろそうだからぜひやってみようと、今仕上がりを待っているところです。ワインは、ボディ感のあるものであれば熟成させて何十年も持たせることができます。リーズナブルなものは品質の維持が難しいのですが、いいワインであればこうした活用方法もアリなのではないかと。ワインからブランデーへ、どんなお酒になるか非常に楽しみにしています。良い結果になれば、さらに力を入れて進めていきたいですね。
――コロナ禍でお酒の在庫を抱えているところはたくさんあると思いますし、SDGsの機運も高まっているところなので、まさに今の時代ならではの取り組みですね。
そうですね、ワインやシャンパンの捉え方も、コロナ禍をきっかけに見直されていますので。なぜかというと、クラブなどいわゆるナイトマーケットが休業していたことが影響しています。シャンパンタワーなどでお酒がきちんと飲まれていないことを、シャンパンメーカーの方々も「このままではいけない」とこの機会に見直すようになりました。やはりちゃんと食事が伴う飲食店で、by the glassのシャンパンを取り扱って欲しいというニーズが高まり、我々も飲食店へ積極的に働きかけた結果、如実にシャンパン・ワインの注文が増えています。やはり第1回(リンク)でもお話したように、ブランディングのために必要な所へアプローチすることが大切なんですね。
テキーラもひと口で飲み干すような、お遊びで飲むイメージが定着してしまっている。でも、プレミアムテキーラと呼ばれる一本3万円するような商品だってニーズがあります。やはり今後お酒に携わる業界全体で取り組むべきは、“質の良いものにどう付加価値を付け、適正な価値を表現するか”に尽きると思います。
その他連載記事はこちら:
第1回:アフターコロナに向けて酒類提供のスタイルはどう変わる?
第3回:多くのファンが集まる理由は? BARのブランディングに必要なもの
<プロフィール>
小倉秀一
(株)いまでや代表取締役社長。大学卒業後にサッポロビール(株)に就職、3年勤務した後に、家業である酒屋を継いで2代目となる。“町の酒屋さん”から国内クラフトメーカーメインの小売店にシフトし、酒販店「IMADEYA」を運営。現在は千葉、東京に計5店舗を展開し、日本酒、焼酎、ワイン(国産・インポート)等を取り扱う。販売・卸だけでなく、酒造メーカーや飲食店と積極的にコミュニケーションを取り、販売企画、提案、販売サポート、アイデア提供も行う。
